僕がどんなに君を好きか、君は知らない


色づいた木の葉が散り始める頃、シンジ君は退院し、

僕たちは彼を家族として迎えた。

けれど、シンジ君が渚姓を名乗るかどうかは、まだはっきりしていない。

十五歳になるまで待って、その判断はシンジ君自身がするといいだろう

と、父は言った。




シンジ君は複雑な表情で頷く。





十五歳になれば、自分で養子縁組を決められることを、

その時僕は初めて知った。

どうしてそんな回りくどいことをするのか、僕には理解できなかったが、

恐らく、シンジ君の心の何処かに本当の父親と暮らしたいと

思う気持ちがあるかも知れないと、父は考えているのだろう。

僕は、シンジ君が何方の名前を名乗ろうと構わなかった。

ただ、シンジ君の父が現れ、シンジ君と暮らしたいと言うのなら

僕はそれを許さない。

シンジ君自身がそれを望んだとしても、同じことだ。

間違いなく反対するだろう。

シンジ君の心は酷く傷ついているのだ。

もう、これ以上傷ついてはいけない。

シンジ君の父親がシンジ君を幸せにできるとは、どうしても思えなかった。








シンジ君が僕の家に来たその夜、僕たちは一緒に眠った。

二人では少し狭い寝台で。

シンジ君には部屋を用意していたが、心許ない表情を見ていたら、

シンジ君を一人には出来なかった。

たった一枚の壁でも、それがとても気の遠くなるような距離に

なることを僕は知っているから。







安らかな顔で、シンジ君は眠っている。

寝台に横になると、まもなく寝息を立て始めた。

僕はなかなか寝付かれず、シンジ君の寝顔を見つめる。

額に掛かる髪。

僅かに開く、唇。

僕はそっと、その口唇に接吻た。

シンジ君は目を覚まさない。

もう一度接吻けて、今度は、そっと舌を入れてみた。

僅かに、反応が返る。

シンジ君がうっすらと目を開け、どうしたのという表情を見せた。

してもいい?

僕が尋ねると、シンジ君は眠いよ、と応えた。

僕は構わず、シンジ君を抱き寄せる。

まだ半分眠っているシンジ君は、力の抜けた体を僕に預けた。

シンジ君の体は温かく、そしてしなやかだ。

僕は口唇に触れ、首筋を滑り、シンジ君のパジャマを剥いだ。

そうされている間にもシンジ君は瞼を閉じ、再び眠りの中に戻ろうとしている。

それを無理やり引き戻すように愛撫をすると、その口から微かな声が漏れた。

僕はその愛撫を下肢に移してゆき、更に声を上げさせる。

シンジ君の反り返る喉が、僕を誘う。

甘い喘ぎに、自分を押さえられなくなる。

僕はシンジ君自身を口に含んでみた。

その行為に、シンジ君は驚いている。

僕の髪に指を絡ませ、腰を引く。

僕はそれを許さず、舌を絡ませた。

口ではやめてと言っているけれど、シンジ君の体は正直に反応する。

ここでやめていいわけがない。

こんなに感じているのに。

舌で彼を追い立て、責める。

シンジ君は切ない声を上げながら、僕を両足で挟み口の中に放った。

どうしようか少し考えたけれど、そのまま飲み下した。

シンジ君のものと思えば、抵抗はまるでなかった。

シンジ君は両手で顔を覆い、頻りと恥ずかしがっている。

恥ずかしがることは無いのに、と耳元で囁きかけ、初めての時と同じように

シンジ君の内部に指を差し入れた。

ひくりと、体を反らしシンジ君の体が堅くなる。

力を抜いてくれなければ、僕が入れないよ。

堅い蕾をを開くように、シンジ君の内部を探る。

けれど、僕はもう我慢出来なくなっていたので、シンジ君のそこが

まだ僕を受け入れるのに十分では無いままに押し入った。

シンジ君は苦しそうに、顔を顰めている。

唇を噛み、声を殺して。

とても辛そうだ。

一度僕を受け入れたくらいでは、体は慣れないらしい。

でも、僕は止めない。

止められない。




僕自身不慣れなその行為は、快感よりもむしろ苦痛を与えてしまって

いるはずなのに、シンジ君は素直に僕を受け入れようとしている。

抵抗らしい、抵抗はまるで見せない。

そんなシンジ君に、僕は自分の欲望を押し付けることしか出来ず

苦い罪悪感を覚えた。

けれどそう感じたのも一瞬だけで、シンジ君の齎す熱い波に

攫われてしまうと、どうでもよくなってしまう。

僕は貪欲にシンジ君を求め、更に奥へと進んでゆく。

シンジ君が僕の名前を呼び、細い手が僕に絡む。

僕は応える変わりに、彼を強く突き上げた。

シンジ君は大きく息を飲み、僕の下のその体で緩やかな弧を描く。










不安気な表情を浮かべて、シンジ君が階段を降りてくる。



昨夜シンジ君は、僕と離れて一日知らない人達の中で

過ごさなければならないことが嫌だとこぼしていた。

僕にしても、シンジ君が一人心細い思いをするのは辛い。



今日、シンジ君は初めて登校する。





僕たちは同じ学校には通えない。

シンジ君は前までの生活で、殆ど学校に通っていなかった。

その所為で、彼の学力は随分と立ち遅れている。

とても、僕の通う私立には編入できない。

恐らく、これから通う学校でも大変な苦労を強いられるだろう。

勿論、僕はシンジ君の為になんでもする。

だから、シンジ君は何も心配することはないんだ。






僕とシンジ君は並んでテーブルに着き、母さんが用意してくれる

朝食を食べる。

シンジ君はあまり食が進まない。

母さんは色々と気を揉んでいたけれど、僕は心配ないよと言った。

緊張しているんだ。






僕たちは、駅までは一緒に行けるけれど、駅からは別々になってしまう。

僕は電車に乗り、シンジ君はそこからまた少し歩く。



家を出てからのシンジ君の足取りは益々重く、このままのペースでは

転校初日から遅刻しかねなかった。

シンジ君は僕に先に行くよう言うけれど、そんなこと出来るわけが無い。

君が学校に行かないのなら、僕だって行かないよ。

シンジ君は大きな溜め息を一つ吐いて、仕方がないねと言う。

僕だって本当は、シンジ君が嫌がることを強要したくはないんだ。

でも、これはシンジ君の言う通り仕方がないこと。






結局僕は、シンジ君が学校の門を抜け、

校舎の中に姿が見えなくなるまで見届けた。

シンジ君は何度も何度も、僕を振り返っていた。

僕は今すぐにでも駆けよって、シンジ君を抱きしめたかった。

学校なんか行かなくてもいいよ、君が望まないことは

しなくてもいいんだ。

そう言ってあげたい。

けれど僕は、帰りにはまたここに迎えに来るから、としか言えない。

そう言って、シンジ君を学校に向かわせるしかなかった。





僕は一時限までに間に合わず、その上、一日中どの授業も上の空だった。

時計ばかりを気にして、シンジ君のことばかり考えていた。









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